2008年12月13日(土)・全理連ビル(代々木)・午後1時30分・満席
主催・ 民放9条の会 (結成3周年記念集会 第10回「私と憲法9条を語る集い」)
*森 達也さんのプロフィール
1956年 広島県呉市生まれ。立教大学法学部出身。
俳優、不動産、広告会社など様々な職種を経てテレビ製作会社に入社。報道系、ドキュメンタリー番組を中心に、「職業欄はエスパー」「放送禁止歌」「1999年のよたかの星」「ドキュメンタリーは嘘をつく」など40本以上の作品を手がける。
演題 「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」
(メモ)
・昨年9月のことだが、北千住駅を歩いていたら警官に呼び止められた。カバンの中を見せてくれ、といわれた。職質ですね。私は「任意ですか?強制ですか?」と聞いた。任意だ、と言うので断って歩いたら、警官が増えた。また断ったら、さらに警官が増えた。周りに通行人が集まって来た。時間のこともあるから、やむなくカバンを開けた。
・「何を探しているのか?」と聞いたら、(警官は)「カッターナイフなど」と答え、「正当な理由無く持ち歩いていないか、調べている」と言った。洞爺湖サミットのための特別警戒中、と話した。(なにも持っている訳がない)。
人間の持ち歩くものに、ひとつひとつ正当な理由があるわけがない。洞爺湖は北海道だ。ここは北千住だ。
・「特別警戒中」の看板が目立つ。駅ほかいたるところに「防犯カメラ」が設置され、「監視中」のポスターが貼られるようになった。山形の温泉に行った。山の中で家が3件しかないところに「テロ警戒中」の大看板が立ててあった。同じものが日本海に向けて立てている所もあった。
日本全体がセキューリテイになっている。
・以前はこういうことは無かった。何時頃からこうなったか、と考える。
私は、1995年のオーム真理教事件がきっかけになっていると思う。
あの時は、朝から夜中までテレビはオームだけの報道になった。
何か製作してもオームしか受け付けなくなった。
そういう中で「TBS事件」「坂本弁護士事件」が起きた。TBSは黙っていた。筑紫さんは「TBSは死にました」と話した。全て、TBSをバッシングした。
文春、新潮は「オームは核兵器を持っている」と書いた。
・私もオームを撮っていた。しかし、フジテレビから撮影禁止を命ぜられた。無防備すぎる、というのが理由だった。私は、土日に一人でオームを撮りに行った。多くを撮った。1996年に製作会社をクビになった。
そのとき撮ったもので「デモテープ」を作ったが全部のテレビ局で放送を断られた。
それで1998年に、自主制作映画「A]を作った。国外の映画祭には20回以上呼ばれている。
オーム真理教だけの2時間30分の映画だ。私はオームだけを撮ったのではない、日本社会を撮ったつもりでいる。
・「A]は何故(日本で)放送禁止になったか、と考える。
映画「A」を見た人の感想で1番多かったのは、「オームの人たちは普通の人ですね」「オームは善良な人ですね」というものだった。
これは、テレビ局にとっては"NG”だった。
オームは、凶暴、凶悪でなければならない。自分とは異質な存在で無ければならない。善、悪の世界で悪は悪でいる方が、こちらは安心できる、そういう流れが出来ていた。
・私は、あれ程善良な人たちが、何故あのような事件を起こしたのかを追求したかった。
これをメディアは拒否した。
・オーム真理教事件の動機は不明のままだ。
何故サリンを撒いたのか、動機がまだ分っていない。
動機が分らないと不安を持つ。不安が蔓延する。
一般の犯罪でも同じだ。自分が夜道で襲われた。その場は逃げるなりする。しかし、なぜ襲われたかが分らないと不安は続く。自分を守るため、皆で帰ろう、集団で行動しようと言うことになる。チームができる。やがて旗印や歌も必要になってくる。自分を守るため武器も持とうということになる。
日本全体がそのような状態になった。
・(オームの時期)全体に集団化の流れがあった。
「悪」を作り出し、不安と恐怖の対象にして集団化を行なう。
1999年、小渕内閣の時「国歌、国旗法」が成立した。「住民基本台帳法」も成立した。
この法案の社会的な背景には、集団化があった。
・不安と恐怖の根源について考えてみたい。
殺人事件は、2008年は全国で"1199件”だ。戦後最低だ。ニューヨークも同じで、殺人事件が減り治安が回復している。ニューヨークでは、市長と警察署長が共同で記者会見をして、これを誇っている。
日本で1番殺人事件が多かったのは1954年で"3081件”だ。(映画 オールウエィズ、、、の年だ)。
現在、戦後1番治安は良かったことになる。メディアは何故報道しないのか。
警察は、何故記者会見をしないのか。
・セキューリテイ会社が盛況だ。監視カメラも増え続けている。
こういう会社への警察の天下りもある。
・政治家も不勉強だ。鈴木むねおさんと雑誌で対談した時、このことを言ったら「それは違うだろう。犯罪は増えているだろう。」と答え、最後に「知らなかった」と話した。
・「不安・恐怖の根源」に実態は無い。
しかし、仮想敵を作る必要がある。
政治、警察、メディアも(殺人事件の減少)に沈黙している理由がここにある。
・仮想敵は、外に向かっては「北朝鮮だ」。内に向っては「凶悪殺人事件」だ。
国民の間に不安ができる。どうするか。やられる前にやれ!ということになる。
対外的には戦争だ。戦争の口実は全て「自衛のため」だ。
愛する者がヤラレル!その前に殺れ!
アジアの解放。自由主義の防衛。これが戦争の口実だ。
田母神氏も「あの戦争は自衛戦争だった。間違っていなかった。」と言っている。氏は、世論の半分は自分を支持している、とも言っている。(このテの人は、町内会に必ず一人や二人はいたし、今もいる。しかし、支持はされていないのだが。)
・罪責感も変わってきている。
厳罰化への要求が強まっている。死刑判決は、2005年以降3倍に跳ね上がっている。
凶暴な人間は抹殺してほしい。「備えあれば憂い無し」だ、の要求だ。
・リスクとハザードの関係を考えなければならない。
マムシはハザードは高い。しかし、リスクは無い。都会にマムシは居ないからだ。
・2002年に"パワーウエーブ”問題があった。白装束の集団をテレビは連日報道した。
彼らがやった悪い事は「駐車違反」だけだった。
国民は彼らにセキユーリテイーを燃やした。過剰な悪意があった。
タマちゃん騒動では、過剰な善意があった。
・マンボンギョン号の寄港問題があったとき、評論家のカミムラさんと対談した。彼は自衛隊出身の方だ。
彼は、北朝鮮は旧式の兵器しか持っていない。使い物にならないよ。北朝鮮が日本を攻めることはない。何故なら、彼らは馬鹿ではないからだ、と話した。そして、テレビではこういうことは言えない。すぐ、ほされるからね、と続けた。
・ルワンダで虐殺事件があった。フツ族とツチ族の対立だが、これはラジオがあおったと後に言われた。
DJは、「あおった覚えは無い。ただ、あぶないぞ!と言っただけだ。」と言っている。
日本では、関東大震災の時、6000人の朝鮮人が殺されている。メデイアがあおったためだ。あおられた方はヒートアップする。
・アメリカは、第一次世界大戦までは不干渉主義が貫かれていた。第二次世界大戦で戦時体制の国を作った。
それ以降、朝鮮、ベトナム、イラクと大義を作って戦争を続ける国になった。
・日本は、憲法9条があったからアメリカの様な国にはならなかったのだ。
・ファシズムは、1914年から1930年にかけて、世界で同時多発的に起きている。
何故この時期、ファシズムが一斉に起きたか。(文化面から見ると)私は映像とラジオ、映像と音声メデイアの発達と影響が決定的だったと考えている。(略)
・ファシズムは消えたがメデイアは残っている。
しかも、テレビは大きく発達した。テレビとインターネットは融合するだろう。さらに巨大なメデイアが発達する。
化け物的になる。核兵器に匹敵するような威力を持つのではないか。
・メディアは(ファシズムに利用されたこともあるが)反転すれば、市民の強い味方にもなる。
市民社会が変わればメディアも変わる。
亀田騒動があった。金平会長が5時から記者会見をやると言った。全ての放送局が詰めかけ準備していた。
金平さんの会見の内容は「明日、亀田が直接話します」と云うどうしようもない内容だった。さすがにテレビ朝日は、途中で打ち切った。(後で、視聴率が落ちたと叱られたとも聞いたが)、これは正しい判断だと思う。今になってみると、誰にも分る。何かのきっかけで変わる。
・憲法9条は、理想を述べていると言われるわれるが、実は最もプラグマティックでドラマティックな内容だ。
セキユーリティーから戦争は始まる。武器を持たない事は、仮想敵を持たない事だ。これは最も現実的な安全の保証なのだ。
・少し憲法改正運動は落ち着いているが、在庫一掃は出来ていない。
私達は緊張感を持ち続けなければならない。
(拍手)
(対 談)
*イワサキさん(民放9条の会運営委員)
・映画「私は貝になりたい」を見ました。普通の床屋さんがB級戦犯として死刑になりました。
あんな善良な人が何故?との思いに駆られました。
*森さん
・息子が(ポスターを見て)「私は"グ”になりたい」って何のこと、と聞いてきました。(笑)
・・・
・良い人が誰かに代わって人を殺す。セキューリティのためと際限なく殺すようになる。これは恐ろしいことです。
・誰かを悪にしなければならない。そして、処罰で殺す。これは不条理になる。
・アイヒマンは、最後の戦犯といわれ、裁判を世界がかたずを飲んで見た。しかし、彼は普通の中間管理職だった。言う事は一つ。「上官の命令で殺った」だった。これで何十万人も殺した。
(人間は)ここから抜け出さなければならない、と思います。
*イワサキさん
・殺人事件は減っている。しかし、秋葉原のような事件がある。あのような事件は増えているようにも思う。
*森さん
・動機なき殺人! それでまとめられている。
・メディアのアナウンス効果もある。殺したいから殺した!とされ、これは恐い!とされる。
・通り魔事件は増えたようにも言われるが、去年は最低だった。
しかし、今年は増えるのではないか。来年はもっと増えるのではないか。怖い、恐い、が事態と会わせるようになる。
*イワサキさん
・たくままもる事件があった。彼は自殺願望だったのではないか。
死刑制度があるから起きた事件ではないか。
*森さん
・(日本では)死刑制度は犯罪の抑止効果があるから必要とされている。
ヨーロッパでは廃止されている。しかし、犯罪は増えてはいない。
日本では、自殺者3万人で世界2位だ。自分の命を止める人は人の命も奪う。
死刑制度は犯罪防止に役立っていない。
*イワサキさん
・何故、死刑廃止の方向へ行かないのか。死刑制度には国民の8割が賛成しているという調査もあるが。
*森さん
・アンケートのやり方にも問題がある。しかし、存続論は多い。
ヨーロッパでは、存続:廃止が6:4だった。それでも政府が廃止で押し切った。現在は6-7割の人が廃止に賛成している。日本政府は、6:4では押し切れない。
続く
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